
天皇陛下(今上天皇)が生前退位を表明されました
2016年7月13日の報道によりますと、
天皇陛下が「生前退位」の意向を示されているそうですね。
日本政府や宮内庁としても、時間をかけて慎重に検討をすすめていくものを見られます。
生前退位とは?
「生前退位」とはどういったことなのでしょうか。
明治、大正、昭和と時代は変わってきましたが、
明治天皇、大正天皇、昭和天皇が崩御される(亡くなること)と、
皇太子が天皇となります。
しかしながら、「生前」ですので、
生前退位とは、
天皇陛下が、天皇の位を生前に皇太子さまに譲るということですね。
天皇陛下の情報
第125代天皇
在位期間
1989年(昭和64年)1月7日 – 在位中
即位礼 1990年(平成2年)11月12日 皇居
大嘗祭 1990年(平成2年)11月22日・23日
元号 昭和 : 1989年
平成 : 1989年 – 現行先代 昭和天皇
誕生 1933年(昭和8年)12月23日午前6時39分(82歳)
東京府東京市麹町区
宮城内産殿
御名 明仁
1933年(昭和8年)12月29日命名
称号 継宮
印 榮
元服 1952年(昭和27年)11月10日
父親 昭和天皇
母親 香淳皇后
皇后 美智子(正田美智子)
1959年(昭和34年)4月10日大婚
子女 皇太子徳仁親王(浩宮徳仁親王)
秋篠宮文仁親王(礼宮文仁親王)
黒田清子(紀宮清子内親王)
皇居 皇居 吹上御所
栄典 大勲位
学歴 学習院大学政治経済学部2年次中退(1954年)
なぜ天皇陛下は「生前退位」を発表したのか?
年齢
天皇陛下が生前退位の意向をしめされている理由として最も大きなことは、
「年齢」です。
天皇陛下は、1933年にお生まれの現在82歳です。
2011年には、マイコプラズマ肺炎で入院され、
2012年には、狭心症の症状が認められたため、冠動脈バイパス手術を受けられました。
年齢的なこともありますし、「日本国の象徴」としての精神的疲労も積み重なってきておられると思われます。
太平洋戦争や、高度経済成長、東京オリンピック、東日本大震災等も経験してこられました。
日本国民、日本国のために精一杯の公務をされてきたわけです。
まだ、天皇陛下からの正式は発表はありませんが、
私が思うに、
ご高齢となり、公務を行うことが難しくなってきた天皇陛下は、
皇太子である徳仁親王が天皇としての責務を果たすことにふさわしく、
明治時代からの時の流れと違う形になったとしても、
生前退位をすることによって、
日本国がよりよい方向に進むように配慮していただいたのだと思います。
また、これから更に年を重ねていくなか、公務を大幅に減らしたり、
代役を立てたりするといった事を望んではいないのでしょう。
公務の多さ
天皇陛下が行う公務は非常に多いのです。
1年間に皇居内で行ったものだけでも270件。
これに加えて、海外への訪問や、被災地への訪問等もありますね。
皇居のなかでは、
毎日何十人もの来客が天皇陛下への面会にきます。
また、海外のVIPも天皇陛下に挨拶にきます。
この時に海外のVIPが皇室に入ることが出来ずに、
天皇への面会を拒否されたら
「我が国は軽くあしらわれた」
という解釈をされ、最悪、国際問題になりかねません。
そのため、天皇陛下はご対応をされているのですね。
また、天皇陛下の公務として、
公文書に署名をする必要があります。
国会での決議、閣議の決定に要する文書に
その日のうちに署名をする必要があります。
外国との条約承認にしても、天皇陛下の署名が必要になります。
国会会期中は、おそくまで書類への署名が必要になります。
平成はなくなるのだろうか?
現行法ではどうなっている?
「元号法」で元号についての定めがされています。
(ちなみに元号法は日本の法律の中で最も条文が短いです)
元号法
(昭和五十四年六月十二日法律第四十三号)1 元号は、政令で定める。
2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。
「皇位の継承」があった場合に限り改める
とありますので、天皇陛下が生前退位をし、
天皇の位を皇太子に継承した場合、元号が改まると解釈出来ます。
そのため、天皇陛下が生前退位をした場合、
「平成」という元号が改まることになりますね。
次の元号はどのようになるのだろうか?
さて、次の元号はどのようになるのでしょうか。
1979年の大平内閣において、
元号の選定について以下の具体的な要領を定めました。
まず流れとしては
- 候補名の考案
- 候補名の整理
- 原案の選定
- 新元号の決定
となります。
1の候補名の考案では、内閣総理大臣が選んだ若干名の有識者が決定します。
それぞれの候補者は、2~5つの候補名を選定します。
その候補名には、「意味」と「出典はどこか」という説明についても合わせて提出します。
そして、各有識者が提出した2~5の候補について、
官房長官が、検討・整理を行います。
検討整理にあたっては、以下の6つの点に注意をすることになっています。
- 国民の理想としてふさわしいようなよい意味をもつものである
- 漢字2字であること
- 書きやすいこと
- 読みやすいこと
- これまでに元号もしくは、おくり名として用いられたものでないこと
- 俗用されているものではないこと
おくり名とは、「諡」と書きます。
死後につける名前の事ですね。
官房長官が検討・整理し、内閣総理大臣へ報告をします。
その後、官房長官、内閣法制局長官などとともに会議を開き、
数個の案を策定。
その後、全閣僚会議において、協議をするとともに
衆議院、参議院議長にも意見を聞きます。
そして、閣議において、「改元の政令」で決定されます。
このような長い長い決定をされて、
「平成」という元号が決まったのですね。
天皇陛下が生前退位をされた場合、
どんな元号になるのでしょうか。
天皇陛下のお名前は「平成天皇」になるのか?
明治天皇・大正天皇・昭和天皇においては、「(元号)天皇」
と呼んでいますよね。
これらの名前は、天皇の崩御後、つまり、天皇が亡くなったあとに送られるものです。
これを諡(おくり名)というのですね。
つまり、まだ存命中の天皇に対しての呼称としては誤りであるというのが通説であり、
現在の天皇陛下にたいして「平成天皇」と呼称するのは誤りですね。
また、その時の元号を諡(おくり名)とするという決まりもありません。
現に、天皇陛下が崩御され際に、「平成天皇」というおくり名が贈られるという決まりもありません。
もっというと、
「元号+天皇」という呼称自体を崩御後に限定し、
存命中の使用を禁止している法律も存在しません。
つまり、そういった法律はないわけで、通説的に、
「そのときの元号+天皇」という形にしているわけですね。
ですので、天皇陛下が生前退位をされたとしても、
天皇陛下は天皇陛下であり、「平成天皇」になるわけではないのですね。
天皇陛下が生前退位したら、次の天皇は誰になるのか?
皇室継承順位
皇室典範(こうしつてんぱん)に、皇室継承順位についての記載があります。
皇室典範第一条:皇位は皇統に属する男系の男子がこれを継承する。
皇室典範第二条:皇位は左の順序により皇族にこれを伝える。
-
皇長子
-
皇長孫
-
その他の皇長子の子孫
-
皇次子およびその子孫
-
その他の皇子孫
-
皇兄弟及びその子孫
-
皇伯叔父及びその子孫
とかかれています。
これに基づくと、
皇位継承順位は、
- 皇太子徳仁親王
- 秋篠宮文仁親王
- 悠仁親王
- 常陸宮正仁親王(ひたちのみやまさひとしんのう)
- 三笠宮崇仁親王(みかさのみやたかひとしんのう)
の順になりますね。
愛子さまや、佳子さま、眞子さま、悠仁さまの継承順位は?
皇太子夫妻の長女である愛子さまや、
秋篠宮夫妻の長女、次女、長男である、
眞子さま、佳子さま、悠仁さまの継承順位はどうなのでしょうか。
愛子さま
眞子さま
佳子さま
悠仁さま
皇室典範の第一条では、「皇族に属する男系の男子が、これを継承する。」
と定められているので、
愛子さま、眞子さま、佳子さまは継承することが出来ません。
悠仁さまは、皇室典範の継承順位に従うと、上で述べたように、第三位になりますね。
過去に「生前退位」した実績は?
最初の退位(譲位)を行ったのは?
日本史上最初の退位(譲位)を行ったのは、
35代皇極天皇(こうぎょくてんのう)とされています。
皇極天皇は、女性の天皇ですね。皇室典範がない時代の話です。
皇極天皇
645年の大化の改新の時代です。
中大兄皇子(なかのおおえのおおじ)が蘇我入鹿を討った次の日に、
皇極天皇は、同母弟の軽皇子(後の孝徳天皇)に皇位をゆずりました。
最後に退位(譲位)を行ったのは?
日本史上、最後に退位(譲位)を行ったのは、119代光格天皇ですね。
光格天皇
1817年に仁孝天皇に譲位しています。江戸時代ですね。
これが最後の生前退位となりますね。
つまり、200年ほど生前退位はされてないということになります。
宮内庁は生前退位についてどのようにコメントしている?
宮内庁関係者によると、
天皇陛下は心身ともに健康な状態で公務を果たすことを大切にしていて、元気なうちに天皇の位を譲るという気持ちを持たれているという。しかし、宮内庁長官は定例会見で「『生前退位』の意向を示された事実はない」と改めて否定した。
出典:元号が変わる?天皇「生前退位」意向の背景
ということで、宮内庁としては、
天皇陛下が生前退位の意向を示してはいないと主張しているようですね。
日本政府は生前退位についてどのようにコメントしている?
さて、日本政府としてはどういった見解なのでしょうか。
安倍内閣総理大臣は
「様々な報道があるのは承知しております。事柄の性格上、コメントは差し控えさえていただきたいと思います。」菅官房長官
「コメントを控える」内閣官房皇室典範改正準備室
「生前退位についての議論はまったく行われておらず、今後も考えていない」
と述べていますね。
そもそも現行の法律上、生前退位は可能なのでしょうか?
現行の皇室典範には、退位に関する規定がありません。
憲法二条
「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、
これを継承する。」
皇室典範第四条
「天皇が崩じたときは、皇嗣が直ちに即位する」
と定められているのみであり、
退位に関する条文はありません。
この理由として、宮内庁の羽毛田次長は、
以下の理由から退位を基本的には認めていないと説明されています。
-
(1)退位を認めると、歴史上いろいろ見られたような、いわゆる上皇や法皇的な存在というものの弊害が出る恐れがある
-
(2)必ずしも天皇の自由意志に基づかない退位ということに強制がありうる。
-
(3)天皇が恣意的に退位する懸念がある。
1のポイントは、「院政」などの政治的動きがあり、
皇位継承で争わないための取り決めでもあるのですね。
まとめ
天皇陛下が「生前退位」の意向をしめされました。
生前退位を行うためには、
皇室典範を改正する必要性がありますし、
宮内庁と、内閣がしっかりと連携をとって調整をしていく必要があります。
天皇陛下のお気持ちを大事にしてほしいですね。